学習会第1夜ナラ枯れに関する質問と回答

2022年6月14日(火)、連続学習会「ナラ枯れ被害の現在と皆伐更新の可能性―持続可能な里山管理を考える」 第1夜「2020年代のナラ枯れ被害の実態を知る」を開催しました。

この日、松元信乃さん(東京都公園協会)から「都立公園60か所におけるナラ枯れ調査の3年間の動向」というご報告を録画でいただきましたが、その場では質疑応答できませんでした。

そこで、参加者からいただいたご質問をまとめて松元さんにお送りしたところ、以下のとおりご回答いただきましたので、お知らせします。

質問1)
都立公園におけるナラ枯れ被害発生本数の変化
(1)数字は累計ですか(単年度ではなく)
(2)「枯れなし」が2020年500、2021年904とありますが500本はほとんどが2021年でも「枯れなし」だったのでしょうか。穿孔されても枯れなかったものはそのまま生き残るとの論文がありますが、そのように言えますか。
(3)区部東部地区の被害が少ないのは公園緑地等が少ないからか。大径木が密集していないのか。まだ拡大途上にあるということでしょうか。
回答1)
(1)毎年度、園内にある被害木をカウントしているため、前年度枯損し切り残したものが残っている場合、ダブりがあるのは事実です。ですが、主要箇所にある枯れた木は撤去していますので、ダブりはそれほど多くないと思われるため、累計ではなく単年度と捉えていただければと思います。
(2)枯れなし個体は、カシナガによって穿孔を受けたが枝枯れを生じていない個体を指しています。
また、ナラ枯れの要因はカシナガによるマスアタックです。なので、少数の個体が繰り返し穿孔をしても、マスアタックを受けなければ毎年穿孔を受けても、毎年枯れない個体は存在するとみられます。
ただし、500個体のうち何本が翌年枯れたのか、までは調査していないので、中には年越しして枯れるものもあったかもしれません。
(3)東部地区の公園は新規造成された公園が比較的多く、西部によくみられるような大規模な雑木林はほとんどありません。おそらく標的となる体径木が集中していないことが理由なのではないかと考えています。

質問2)
桜ヶ丘公園こならの丘での調査結果について
・皆伐エリアでは幹周50㎝以上でも枯れがないのは、エリアの大径木が少ないのでカシナガが襲ってこないと解釈してよろしいでしょうか(被害の有無や程度は単に幹周だけによるものではなく、大径木がどのくらい密集しているかによると考えられるか。)皆伐しなくても大径木の密度を下げれば被害は減らせると考えられる気がしますがいかがでしょうか。
回答2)
ご指摘の通りで、大径木の密度が低いことが皆伐エリアの被害減につながったと考えていますので、一斉に皆伐をしなくても、選択的に大径木を減らせば同様の効果が期待できるのではないかと考えています。実証する場があれば検証したいところです。

質問3)
大変興味深い内容なのでweb上などで公開している資料があれば教えてください。
回答3)
調査の内容は下記のサイトで一般公開していますので、ご覧ください。
東京都建設局 緑化に関する調査報告の1)技術調査・計画編「5.都立公園の小面積皆伐によるナラ枯れ被害の回避」

質問4)
民有地のナラ枯れ防除でカシナガトラップを設置しましたが、管理が難しい状況です。ご紹介されていたメイカコートは、一般の人(住民ボランティアなど)でも扱えるものでしょうか。
回答4)
ボランティアの方々が施工できるかどうかは判断が難しいので、業務の統括をしているであろう行政の担当者に聞いてみてはいかがでしょうか。公園では、被害木の切り株(カイロモンという集合フェロモンがでるらしい)に成虫が寄ってくるのを防ぐために塗っていましたが、高いところの施工は委託業者に頼んでいたと記憶しています。

質問5)
ナラ枯れの被害がでてきたとき、そのままにしておいた場合、大きな木から被害がでるようだが、大きな木が倒れ、小さな木には被害が及ばないのか?それとも小さなナラまで被害がおよびナラの林が消滅してしまいますか?ナラの木が被害を受けても、その他の木は大丈夫なのか?
回答5)
2年間の被害木本数を幹周別に示した資料をお見せしましたが、カシナガの被害が増えると前年度は被害を受けなかった比較的細い個体の被害量も増えていました。なので、被害を放置すると雑木林が消滅する可能性はあると思います。
しかし、生態系の原理から考えて食料が減った状態で生き物が無尽蔵に増えていくとは考えにくいので、大径木が減ればどこかのタイミングでカシナガの被害も落ち着くのではないかと考えています。

質問6-1)
去年はクリアファイルに石鹸水を入れるトラップを被害木につけて、何万匹というカシナガを捕まえましたが、それでも5本の木が枯れてしまいました。今回は、トラップについての言及はありませんでしたが、トラップに対するお考えもお聞かせください。
質問6-2)
クリアファイルを使ったトラップの設置をテスト的に行っています。効果や課題について情報をお持ちでしたらお教えいただけると幸いです。
回答6)
トラップについてのノウハウがないため、今回は話に入れませんでした。トラップで被害を抑え込んでいる事例があれば、ぜひ教えてほしいです。

質問7)
これまで西日本でとられた対処とその結果を知りたいです。
回答7)
西日本の対策はよく存じておりません。

<主催者注>
ネットで調べてわかる範囲のことですが、たとえば、以下の資料などが参考になります。ナラ枯れ後には、ササや先駆性樹木が繁茂する例が観察されており、更新阻害対策が重要になると思われます。

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